研修コストを最大75%削減。
「人材開発支援助成金」2026年度版 活用ガイド
「社員のスキルアップは不可欠だが、予算の確保が難しい」「DXやリスキリングを推進したいが、コストがネックになっている」
こうした悩みを抱えながら、助成金の申請に踏み出せていない企業は少なくありません。よくある理由が「うちは新規事業がないから対象外だと思っていた」「手続きが複雑で、気づいたら申請期限が過ぎていた」というものです。
実はその思い込み、2026年の制度改正で大きく変わっています。本記事では、岩崎教育サービスが研修の現場で実際に受けるご相談をもとに、2026年度の制度ポイントと、使い損ねないための実務的な注意点を整理します。
1. そもそもなぜ国は研修費を支援するのか
この助成金の財源は、事業主拠出の雇用保険二事業です。制度の変遷を見ると、国が企業に何を求めているかがわかります。
1990〜2000年代:雇用の「維持」
不況期に解雇を避けるため、休業や訓練を支援する「守り」の時代。
2010年代:非正規雇用の「底上げ」
正規転換や若年層のキャリア支援に軸が移る。
2020年代〜現在:「攻めのリスキリング」
デジタル化・産業構造の変化を受け、政府は「人への投資」に大規模予算を投じています。単なる維持ではなく、企業の付加価値を高める「攻めの学び」を後押しするフェーズに入っています。
2. 2026年、最も使いやすくなった「リスキリング支援コース」
今年度の最大のトピックが、事業展開等リスキリング支援コースの対象拡大です。
これまでこのコースは「新規事業への進出」や「DX推進」が前提でした。「うちには新事業なんてない」と最初から選択肢に入れていなかった会社も多かったはずです。
2026年春の改正で変わったこと
2026年4月8日以降に提出された計画届から、企業内の人事・人材育成計画に基づき、訓練開始日から3年以内に従事予定の職務に必要な訓練も助成対象に追加されました。新規事業がなくても、この要件を満たす訓練であれば最大75%の助成が活用できる可能性があります。
なお、中小企業がこの区分を利用する場合は、計画内容について認定経営革新等支援機関の確認が必要です。要件の詳細は管轄の労働局にご確認ください。弊社でも、この改正を機に「実は使えた」と気づかれるお客様が増えています。
助成内容(中小企業)
| 項目 | 通常の 人材育成 |
リスキリング 支援コース |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 45% | 最大75% |
| 賃金助成 (1人1時間) |
800円 | 1,000円 |
試算例:10人・6時間×3日間の研修を実施した場合
- 研修費用20万円 × 10名 = 200万円
- 経費助成(最大75%):150万円
- 賃金助成(1,000円 × 6h × 3日 × 10名):18万円
合計 168万円 が戻ってくる試算になります。 ※実際の支給額は対象経費の範囲、受講実績、提出書類、賃金要件等によって変わります。
3. 2026年度のもうひとつの新設:設備投資も助成される
2026年4月8日から、事業展開等リスキリング支援コースに設備投資加算が新設されました。
対象は中小企業に限られます。賃金要件または資格等手当要件を満たしたうえで、実技訓練で実際に使用する機器・設備と同種の設備を導入する場合に、導入費用の50%が加算対象となります。
上限額は支給対象労働者1人につき15万円、10人以上で150万円です。
研修で習得した知識・技術を現場に活かすための設備導入まで一体で支援される仕組みは今年度が初めてです。ただし要件が細かく、どのような設備が対象になるかは訓練内容との関係で判断されます。具体的なケースは管轄労働局または弊社までご相談ください。
4. 申請で失敗しないための3つの注意点
助成金は申請すれば必ずもらえるわけではありません。現場でよく耳にする「不支給」のパターンを押さえておきましょう。
① 事前申請は必須、遡り申請は一切不可
原則として、訓練開始日の6か月前から1か月前までに「職業訓練実施計画届」を労働局に提出する必要があります。「研修を終えてから申請しよう」では受け付けてもらえません。弊社にご相談いただく際も、研修の検討段階で早めにお声がけいただくと、申請スケジュールを含めてサポートできます。
② OJTは対象外、OFF-JTの記録が必要
このコースの助成対象はOFF-JT(業務を完全に切り離した訓練)です。支給申請時には、訓練カリキュラムや受講記録に加え、賃金台帳・出勤簿等の提出が求められます。
③ 1分単位の労働管理
研修当日の出勤記録と賃金台帳にズレがあると修正を求められます。残業代を含む労働法規の遵守が前提です。
なお、令和7年4月以降、計画届・支給申請時の申請項目や添付書類の削減・整理・統合が進められ、計算書類には自動計算機能も実装されています。以前よりは申請の手間が減っています。
5. 2026年度が「動きどき」な理由
人への投資促進コースと事業展開等リスキリング支援コースは、いずれも令和4年度から令和8年度(2026年度)までの時限措置として案内されています。
制度終了後に同水準の助成が続くかどうかは現時点では未定です。今年度は対象範囲も広がり、手続きも簡素化された。活用するなら今が最もやりやすいタイミングと言えます。
まずは現在検討中の研修や導入予定の外部講座が対象になるか、ご確認してみてはいかがでしょうか。